2012/10/17

「来週実験室に…」山中伸弥教授

ここ最近で一番心に残ったのは、
iPS細胞の開発でノーベル賞受賞が決まった山中伸弥教授の、

「来週実験室に戻らなければならない。それがノーベル賞受賞者がすべきことです。」

同じ「iPS細胞」をキーワードに、
せっかくの受賞に水を差すような残念な方のお話がこのところ喧しかったけれど、
本物の科学者というのは、こういうものだと
誰もが納得する山中教授のこのお言葉。

そこで他にもいくつか、10月9日の山中教授の会見での言葉から・・・

 

野球は3割打つと大打者、3割5分打つと首位打者。
研究者は1割打つと大成功。

1回成功するためには9回の失敗しないといけない。
日常のストレスはそれだけすごい。

打率が1割ということは、
いいときはたまたまヒットが続くこともあるが、
実際は何十回とトライしても失敗することはしょっちゅうある。

大変な、泣きたくなる、辞めたくなる、そういう20数年だった。


マラソンはペース配分が大切で、
若いころは、後半、はうようにしてゴールしていたが、
今は前半抑えてだんだんペースを上げてゴールできるようになった。 

研究もそんな感じで、
決して焦って早く走りすぎて失敗したり、
途中で倒れたりすることがないよう、
マラソンよりはるかに長い何十年という道のりなので、走っていきたい。

今回の受賞は予想外のことで、
さらに頑張らねばという、期待いただいて責任を強く感じているが、
だからといって実力以上にペースを上げると必ずバテる。

よくペースを考えて、
今、がむしゃらにダッシュすることが私のすることではなく、
これまでやってきたことを粛々と進めて、
どうやったら早く最後までたどり着くかをよく考えて仕事を進めていきたい。


4つの目標。
  • 細胞の技術を維持し、
  • iSP細胞のストックを作って国内外に提供し、
  • 臨床研究を8年弱の期間で開始し、
  • 難病の薬を作る。
この4つの目標をこれまでどおり粛々と進めていきたい。
今回受賞したからといって、目標が変わることはない。

できることなら、
受賞によって多くの方の協力が得られたらなと。 

創薬については大学で細々と薬の探索を行っているが、
日本には優れた製薬メーカーがある。

餅屋は餅屋なので、メーカーの方に協力いただき、
なかなか利益にはつながらないと思うが、
多くの病気の種類があるので、
世界の難病の方にメイドインジャパンの薬を提供する。

そのことを目標に今後も研究を続けていきい。


生命倫理は大変重い問題である。
少なくともマウスでは
皮膚や血液から作ったiSP細胞から精子と卵子の両方が出来るようになった。

それを受精させると新しい生命も誕生しうる。
マウスにおいては皮膚や血液から新しい生命が誕生させる状況になった。

すぐに人間で出来るかは分からないが、必ずその技術の進歩は来る。

不妊治療、原因解明や薬の探索という意味で、
iSP細胞からの精子や卵子の作成の研究を進めるべきだが、
受精させていいのか、受精させるとしたらどこまでいいのか、
ものすごく大きい問題がある。

どこまで許されてどこまでがだめなのか。
受精させないと本当に精子なのか卵子なのかの確証を得られないのか。

研究者だけで決められることでもない。
一般の方だけで決められることでもない。

今からは、ありえない技術の机上の空論ではなくて、
そこまで来ている、いつ完成するか分からない、
数年の時間で出来るかもしれない技術なので
先延ばしせずに議論する必要ある。

家に帰ったら笑顔で迎えてくれる。
アメリカにも一緒についてきてくれて、
何も分からない英語も話せない子どもも来てくれて、
家内も仕事があるのに中断してきてくれた。

家族の支えがなければ仕事は続けてこれなかった。
改めて、家族に対する感謝を今、強く感じている。

アメリカでの3年の留学が
研究者としての一番の基礎で本場アメリカで厳しさを学んだ。
アメリカというのは研究しているか、家にいるか。
ほかのことをすることは、ほとんどなかった。

日本にいる時は研究もする。
夜は診察、土日も当直で家にほとんど帰れなかった。
アメリカにいると研究以外の時間はずいぶん出来て、
その結果、子どもの成長をすぐ横で見ることができた。

子育てに携わることができたというのが、
本当に研究で色々なことがあっても、
家に帰って家族の笑顔を見ることがずっと私の支えだった。
 






ところで、受賞決定の数ヶ月前に
山中教授のチームと同じ研究をしているライバルチームが
人間のiPS細胞づくりに関しての論文を有力誌に投稿したという情報が入った。

もっとデータを積み重ねて論文を発表するつもりだったが、
超特急で仕上げ、すぐに別の有力誌に投稿。
何とかライバルチームに先を越されなくて済んだ。

発表前のデータは研究者にとってはトップシークレット。
ふつうは論文を投稿したことさえ外部には漏らさない。
では、山中教授はどうやってライバルチームの動きを知る事ができたのか?
 
実は、ある米国の友人がこっそり教えてくれたらしい。
 
有力な科学誌の多くはアメリカを拠点としている。
「有力誌の編集部の人達と普段から関係を築いておかないと、情報戦には勝てません」

そして、
そういう人間関係づくりの基礎になっているのは「プレゼン力」なのだそうだ。

山中教授は、
サンフランシスコの留学先で、プレゼンの秘訣を学ぶゼミに参加した。
 
仲間の前でプレゼン演習をする。
自分ではまずまずだと思った時も、身ぶり手ぶりまで厳しく批評された。
アメリカの研究者は、自分の発表をどうやって聴衆にアピールするのか
若いころから体で覚えるのだと知ったそうだ。

「発表は中身が勝負だ」と言っているだけでは、世界との競争には勝てない。
それが山中教授の持論だそうだ。

海外の学会や講演会で目立つプレゼンをすれば、
演壇を降りてから聴衆が声をかけてくる。

そういった立ち話などをきっかけに顔見知りになれば、
メールや電話で連絡し合えるような関係にもなれる。
相手の国を訪れたり、相手が来日した時にはできるだけ会って話をする。
そうやって何年も前から築いてきたネットワークが生きたのだと言う。
 

いや、もう、スゴイ。
山中教授って、控え目なんだけどユーモアもあって
威張る事なく、一般人をバカにする事もなく、
ひたむきに、弛まず研究を続ける姿勢がとてもステキだ。
本物の科学者って、本当に尊敬する。

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